3_性国
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性的マイノリティとは、多様な性のあり方のうち、性別二元性と異性愛主義を基軸として、脆弱な立場におかれている/おかれうる人々を総称する言葉である。近年、日本語圏においてLGBTやLGBTQ+といった英語の表現も一般的に用いられるようになってきた。人は生まれた時に割り当てられた性別のまま生きているわけでもなければ、男性は女性を、女性は男性をパートナーとして必ず選択するわけでもない。にもかかわらず、法律や社会は、生涯を通じて性別を一貫して男女に二分し、お互いに惹かれ合う生き方を前提に設計されてきた。そして、それ以外の生き方を無視ないし等閑視し、また、時にそれを罰することで、性的マジョリティの生き方こそ、人々の生きるべき性のあり方であるとの認識を作り上げている。性的マイノリティには、「性/性別(sex, gender)」と「マイノリティ(minority/minorities)」という2つの要素が含まれる。国際人権法において、この2つの要素は重大な関心事として取り上げられてきた。⑴ 性/性別と国際人権法性/性別にもとづく差別の撤廃は、国連憲章から世界人権宣言、自由1)る。権規約・社会権規約へと至る国際人権法の基礎文書にもれなく登場す1979年には、その中核的な役割を担う女性差別撤廃条約も成立している。女性差別撤廃条約は、性/性別にもとづく差別の撤廃を目的として、1 国際人権法と「性/性別」、「マイノリティ」1序章1国際人権法と「性/性別」、「マイノリティ」国際人権法の歴史から取り残された人々

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