3_性国
30/78

12本論に入る前に、本書が素材とするヨーロッパ人権条約についてあらかじめ簡単に解説しておく。ヨーロッパ人権条約は、正式名称を「人権および基本的自由の保護のための条約」という。国際人権法の中では最も歴史が長く、ヨーロッパ評議会(Council of Europe, CoE)において1950年に採択され、1953年に発効した。主に自由権を規定するこの条約は、ヨーロッパ評議会の加盟国に批准が義務づけられており、2020年4月現在、締約国は47カ国である。東西のヨーロッパ地域だけでなく、トルコ、ロシアまで含まれる。ヨーロッパ人権条約のもとには、個人が国家を相手どって提訴できるヨーロッパ人権裁判所(European Court of Human Rights)がある。ヨーロッパ評議会では、ヨーロッパ人権裁判所によるほか、各国の外務大臣・官僚で構成される閣僚委員会(Committee of Ministers, CM)、各国の国会議員総計324名で構成される議員会議(Parliamentary Assembly of Council of Europe, PACE)、地方自治体会議(Congress of Local and Regional Authority)、資格をもつ400のNGOで構成される国際NGO会議(Internatinal NGO Conference)の「四者対話(quadrilogue)」に加えて、事務局に設置された人権弁務官(Commissioner for Human Rights)も、人権の実現に向けた重要な役割を果たしている。なお、ヨーロッパ評議会のもとには、ヨーロッパ人権条約のほか、ヨーロッパ社会憲章、ヨーロッパ拷問防止条約(拷問及び非人道的な又は品位を傷つける取扱又は刑罰の防止のためのヨーロッパ条約)、マイノリティ保護枠組条約、イスタンブール条約(女性に対する暴力とDVの防止と撲滅に関するヨーロッパ評議会条約)などもある。3ヨーロッパ人権条約について⑴ 概要

元のページ  ../index.html#30

このブックを見る