3_性国
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から、その手続は何度か改正されてきた。大きな変更が加えられたのは、1998年11月の第11議定書および2010年6月の第14議定書である。時期により手続上の細かい違いはあるものの事件はおよそ次の手順で処理されてい⒜ 1998年10月以前第11議定書発効前、すなわち、1953年9月の条約発効から1998年10月までは、ヨーロッパ人権委員会、ヨーロッパ人権裁判所、ヨーロッパ評議会閣僚委員会の3機関により、個人の申立てが処理されてきた。人権侵害をうけた個人は、国家を相手どり、ヨーロッパ人権委員会に申立てを行うことができる。委員会は被害者(victim)の資格や国内救済の完了などの人的・時間的・事項的な基準から申立ての受理可能性を判断し、受理(admissible)または不受理(inadmissible)の決定(Decision)を下す。受理された申立ては、委員会による対審審理や調査に付され、友好的解決(friendly settlement)の達成が図られる。友好的解決がなされる場合、委員会は事実関係と解決内容について報告書(Report)を作成する。友好的解決が不調であった場合は、委員会が報告書において条約上の権利侵害の有無について意見を述べる。この際、委員会または被告国が必要と認める場合は、事件をヨーロッパ人権裁判所に付託することができる。第11議定書の発効以前には申立てを行った個人に裁判所そのものへの出訴権は与えられていない。付託された事件は小法廷(Chambers)において審理される。ただし、特別に重大な問題を提起する事件や、既存の判例から相当な変更を必要とする事件は大法廷(Grand Chamber)へと回付される。小法廷、大法廷ともに判決(Judgement)は多数意見によって下されるが、各裁判官は個別意見(concurring opinion)や反対意見(dissenting opinion)を付すこともできる。判決は法的な拘束力をもち、その執行はヨーロッパ評議会閣僚委員1418)る。18)なお、本書では国家間の申立て事例は扱わないため説明は割愛する。

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