会による監視をうける。なお、ヨーロッパ人権委員会において友好的解決が不調となり、ヨーロッパ人権裁判所に付託されなかった申立てについては、条約上の権利侵害の有無と講じるべき措置をヨーロッパ評議会閣僚委員会が決定す⒝ 1998年11月から2010年5月まで第11議定書の発効後、すなわち1998年11月以降の最も大きな変化は、ヨーロッパ人権裁判所への裁判機能の一元化である。ヨーロッパ人権委員会は廃止され、ヨーロッパ評議会閣僚委員会の権限は判決の執行のみに限定された。裁判所には個人の資格で選出される47名の常勤の裁判官が5つの部(Sections)に分かれて在籍している。各部には事件の受理可能性(Admissibility)を審査する3名構成の委員会(Committee)があり、受理(admissible)か不受理(inadmissible)の決定(Decision)が下される。受理された事件は7名の裁判官で構成される小法廷(Chamber)に送付され、判決(Judgment)が下される。小法廷から回付または当事者から上訴された事件は、17名の裁判官で構成される大法廷(Grand Chamber)で審理が行われる。小法廷から回付されるのは条約解釈に重大な問題が提起される事件や判例変更の可能性がある事件に限られる。判決は法的な拘束力をもち、その執行はヨーロッパ評議会閣僚委員会の監視をうけることとな⒞ 2010年6月以降第14議定書が発効した2010年6月以降は、第11議定書発効にともなう申立件数の激増と未処理事件の堆積を解消すべく、類似事件の処理の簡素化と裁判所機能の重要事案への特化が図られた。申立てを不受理とすべきことが明らかな場合は、単独裁判官による審20)る。19)る。3 ヨーロッパ人権条約について1519)小畑郁「概説Ⅱ:ヨーロッパ人権裁判所の組織と手続」戸波江二ほか編『ヨーロッパ人権裁判所の判例』(信山社、2008)10-12頁。20)小畑・前掲注19)、12-16頁。
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