ら外されていた。スコットランドの1976年性犯罪法には処罰規定が残されていたものの、イングランドとウェールズの1967年改正刑法に準じて解釈することが確認され、1980年刑法により同様の限定が加えられている。北アイルランドでも法改正の議論が繰り返されたものの、世論が二分していることを理由に見送られていた。もっとも、1972年から1981年の間、北アイルランドにおいて同条に関して訴追された62件は、ほとんどが18歳以下の未成年が関係する事案であり、実際の運用はイングランドとウェールズの限定と同様であった。ダジャンは1976年5月、ヨーロッパ人権委員会(以下、委員会)に対して、男性間の性行為に関するソドミー処罰規定の存在と、それにもとづく警察の捜査が、私生活の尊重をうける権利(8条)の侵害にあたると申し立てた。また、性(sex)とセクシュアリティ(sexuality)および居住地による差別があるとして、8条に関する14条の権利侵害も主張した。委員会は1978年3月にソドミー処罰規定に関する申立てを受理(コモンロー上の犯罪については不受理)し、1980年3月、21歳以上の男性間の性行為を処罰対象とする点について8条の権利侵害を認定した(9対1)。21歳未満との性行為を処罰対象とすることの権利侵害性は否定している(8対1、棄権1)。事件はイギリスにより裁判所へと付託され、裁判所は全員法廷での審理を決定した。⑵ 裁判所の結論北アイルランドのソドミー処罰規定は、申立人の私生活の尊重をうける権利(8条)を継続的に侵害している(15対4)。異性間や女性間の性行為と差異ある取扱いをうけている点(8条に関連する14条)は検討する必要がない(15対4)。⑶ 判決の要旨⒜ 8条について北アイルランドのソドミー処罰規定が処罰対象とする行為は、8条の私生活(private life)に該当する。ソドミー処罰規定は、存在そのものが、2 重要判例 ―ダジャン対イギリス事件判決(1981)25
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