3_性国
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価値判断に与するものではない(paras.51‒54)。「道徳の保護」という目的に関して、たとえ他の地域や国がソドミー処罰規定を撤廃しているとしても、北アイルランドに一定数の反対論があることは無関係ではない。この地域における法改正に対する道徳面からの根強い反対論の存在は、「道徳の保護」という目的に関連性をもつ。ただし、北アイルランドの世論が勘案されることは、制約が「必要」かどうかの判断を左右する事情でもない。今日、ヨーロッパ評議会加盟国の大多数が成人間の同意にもとづく私的な性行為を刑事処罰の対象としていないことは、立法当時との状況の変化を物語る。事実、北アイルランドでも21歳以上の男性間の同意にもとづく私的な性行為へのソドミー処罰規定の適用は控えられている。それが北アイルランドの道徳基準に与えた有害な影響も、一般社会が同法の厳格な適用を期待していることも示されていない。したがって、ソドミー処罰規定の維持に急迫する社会的要請は認められない。比例性については、法律を維持する正当性よりも、同法が申立人のような人々の生き方に与える悪影響の方が甚大である。同性愛を不道徳と捉える人々が、他者の私的な性行為に衝撃や不快感を覚えるとしても、それは刑罰の適用を正当化するものではない(paras.58‒60)。したがって、ソドミー処罰規定が成人男性間の同意にもとづく私的な性行為を含めた全面的な刑事処罰である限り、その維持は正当化できない。北アイルランドの道徳観や法改正によって既存の道徳基準が毀損される懸念は、その範囲まで申立人の私生活に干渉することを正当化するものではない。非犯罪化(decriminalisation)は是認(approval)を含意せず、一部の人がそう誤認しうることは同法の不当な内容を維持する理由にはならない。北アイルランド法が申立人に課している制約は、刑罰の重さは別にしても、その広範かつ絶対的な特徴において、追求される目的との比例性を欠く。もっとも、若者などの特に脆弱な人々を搾取から保護するための一定の制約には、民主的社会における必要性が認められる。社会の道徳を保護するための適切な措置の決定、特に刑事法による保護の対象となる年齢の設定は第一義的に国が決定すべき事柄である2 重要判例 ―ダジャン対イギリス事件判決(1981)27

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