3_性国
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より15ヶ月の禁固刑をうけた申立人WBが、8条および8条に関する15)14条の権利侵害を委員会に申し立てた。1871年に制定された刑法175条は、「男性間の自然に反するわいせつな行為(Die widernatürliche Unzucht ... zwischen Personen männlichen Geschlechts)」を刑事処罰の対象としていた。年齢などの限定もなく、男性間の性行為そのものに刑事処罰に科すこの規定は、戦間期のマグヌス・ヒルシュフェルトらによる撤廃運動が繰り広げられた条文としても知られている。第二次世界大戦後にドイツが東西に分割されると、同規定は旧東ドイツでは削除されたものの、旧西ドイツでは条文がそのまま引き継がれた。委員会はソドミー処罰規定には8条2項の「健康もしくは道徳の保護」という正当な目的があることのみをもって、申立ての不受理を決定した。❖X対旧西ドイツ事件決定(1975)以後、対旧西ドイツの事例は、同様に不受理決定が続い8条について、委員会は、性生活(vie sexuelle)が私生活の重要な一3216)た。このうち、1975年のX対旧西ドイツ事件決定では、結論は不受理であったものの、ソドミー処罰規定の構成要件に年齢の限定(21歳以下)が加わった196917)年刑法改正後の事例として注目される。申立人Xは未成年の男性との性行為について、刑法175条、176条により懲役2年6ヶ月の有罪判決をうけていた。15)W.B. v. the Federal Republic of Germany, Decision of 17 December 1955, Application no. 104/55.16)E.g. A. S. v. the Federal Republic of Germany, Decision of 4 January 1960, Application no. 530/59, Yearbook of the European Convention on Human Rights (hereinafter, YB), Vol. 3, pp. 184‒196 ; G.W. v. the Federal Republic of Germany, Decision of 4 October 1962, Application no. 1307/61.17)X. v. the Federal Republic of Germany, Decision of 30 September 1975 Application no. 5935/72. 本件では国内裁判所における証言の信憑性や証人申請等に関連して、公正な裁判をうける権利(6条1項・3項)の侵害も争われた。

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