3_性国
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側面であることは疑いがないとの前提にたちつつ、次のように述べ、申立ての不受理を決定した。1969年刑法改正は、異性愛者として成長する未成年への好ましくない影響を防止し、同性との性関係をもつ未成年が社会から排除され、心理的発達に与える深刻な影響を回避するため、慎重に審議されたものである。ドイツ刑法の年齢制限は比較的高いものの、年齢の設定は各国の合理的な裁量の範囲内であり、社会状況ごとに多様でありうる。ソドミー処罰規定には「他者の権利および自由の保護」という正当な目的があり、刑事罰という手段も民主的社会において必要な範囲内であり、申立ては明白に根拠不十分である。また委員会は、男性間の性行為のみが処罰対象であることは8条に関する14条の問題を生じさせているとした上で、男性間と女性間との間にある差異は社会的保護や関連する危険性の存在により正当化できること、成人間や成人と未成年の同性愛関係に関する心理学や社会学の研究が男性の同性愛は特定の社会文化的集団を形成することで若者を勧誘(prosélytisme)し孤立させる危険性があることを示していることを理由に、この差異は客観的かつ合理的であるとして、8条に関する14条も明白に根拠不十分と結論づけた。❖X対イギリス事件決定(1977)委員会が初めて申立てを受理可能と判断したのは1977年のX対イギ18)リス事件決定である。Xはブリストル在住の会計士であり、2人の18歳の男性と性関係をもったことで2年半の禁固刑に服していた。イングランドとウェールズでは1956年性犯罪法によりバガリー(12条1項)と著しい不品行(13条)にそれぞれ終身刑と2年以上の禁固刑が科されており、1967年改正刑法により21歳以上の同意にもとづく同性間の性行為は適用対象から除外された。なお、国内法上の成人年齢は18歳であり、異性間の性行為の同意年齢は16歳と定められていた。委員会は8条の申立てについて、WB対旧西ドイツ事件決定(1955)3 判例の変遷3318)X. v. the United Kingdom, Decision of 7 July 1977, Application no. 7215/75.

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