3_性国
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以後、健康や道徳の保護に関する社会の認識が変化している可能性があること、および、X対旧西ドイツ事件決定(1975)とは異なり、相手が18歳の成人年齢を超えていることから、明白に根拠不十分とはいえないとして、申立ての受理を決定した。また、年齢設定についても、1967年改正刑法が20年前の知見(=ウォルフェンデン報告書)に依拠していることから、その妥当性を判断する必要があるとして、8条に関する14条の申立ても受理可能と判断した。もっとも、結論として委員会は8条および8条に関する14条の権利19)侵害を否定している。8条について、有罪判決そのものはソドミー処罰規定が「他者の権利および自由の保護」の目的、特に年齢を理由に脆弱な立場におかれる者の保護により正当化されるため、申立人の権利侵害とはいえない。18歳から21歳が処罰対象となることにも同様の正当な理由があり、年齢設定は議会において慎重に検討された結果であって現在も改正議論の最中にあること、その年齢設定により保護される人々への深刻な影響は軽視できないことから、年齢設定そのものが8条の権利侵害とはいえないと判断した。8条に関する14条の権利侵害については、異性間の性行為との差異は8条と同じく客観的かつ合理的に正当化可能であること、女性間の性行為との差異はウォルフェンデン報告書で示された心理学や社会学の知見にもとづいており、X対旧西ドイツ事件決定(1975)の判断とも合致することから、刑事処罰という手段も含めて比例性は保たれているとの判断が示されてい⑵ 権利侵害の認定❖ダジャン対イギリス事件判決(1981)裁判所が初めて8条の権利侵害を認定したのは重要判例にあげた3420)る。19)収容中に男性パートナーへの愛情の表現を阻害されていた点について表現の自由(10条)の侵害も申し立てられたが、10条には感情の身体的表現は含まれないとして権利侵害は否定された。20)X. v. the United Kingdom, Report of 12 October 1978, Application no. 7215/75.

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