4 破産法のイメージ6⑴ 個別執行と包括執行第1編 倒産法─総論 破産法は,「支払不能又は債務超過にある債務者の財産等の清算に関する手続を定めること等により,債権者その他の利害関係人の利害及び債務者と債権者との間の権利関係を適切に調整し,もって債務者の財産等の適正かつ公平な清算を図るとともに,債務者について経済生活の再生の機会の確保を図ることを目的とする」法律です(破1)。このうち,まず「清算」を見ていきましょう。 「清算」をキーワードとして,今回は,破産法のシンプルなイメージを持っていただきたいと思います。破産手続も手続ですので,何が幹となる手続かを知り,いつもイメージできることが大切です。 ここでも平常時との比較で,民事執行法の世界における個別執行は,債務者の財産を,①差押え→②換価→③配当する手続でした。民事執行法の世界も建前は債権者平等原則ですが,先ほど見たとおり,早い者勝ちの世界です。また,強制執行手続は,確定判決といった債務名義の存在が前提になりますが,この債務名義は,一般債権者が民事訴訟法の世界など別のところで入手する必要があります。すべて個別の権利行使の一環ということになります。 破産は,この個別執行との関係でいえば,包括執行,すなわち債務者の財産すべてを差し押さえることになりますので,①差押え→②換価→③配当という流れは同じです。さらに,配当の前提となる一般債権,これを破産手続では破産債権といいますが,破産手続内で確定します。 ここでまとめておくと,究極の危機時期となる破産手続は,債権者平等原則の下で,債権者の個別の権利行使を禁止し,破産手続開始決定により,破産者の財産を①包括的に差押え,②破産管財人が換価し,②′破産手続内で債権者B債務者A①差押え③配当裁判所②換価買受人
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