4_倒講
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6 民事再生法のイメージ12⑸ 債権者平等原則による是正⑴ 事業の再生第1編 倒産法─総論ても,法定の解除原因がありませんので,破産管財人は解除することもできません。このように平常時の民法の規律では,両すくみの状態になり処理ができません。そこで,破産法では,双方未履行の双務契約につき,破産管財人に解除権を認め,解除か履行を選択できることにし(破53Ⅰ),破産管財人が履行を選択した場合には,対価的牽連関係に配慮して,相手方の破産債権を破産債権よりも優先順位が高い財団債権に地位を引き上げています(破148Ⅰ⑦)。 このように倒産時は,債権者を債権者平等原則に服させ,平等に分配する清算のルールだと理解していただけたと思いますが,平常時から倒産時に世界が変わるのは,破産手続開始決定が原則ということにしてしまうと,一般債権者としては,平常時のうちに早く債権回収してしまいたい,債権回収できないとしても担保提供を受けたい,債務を負担して相殺したいとなりますし,債務者も財産を廉価売却したり贈与したり,特定の債権者に弁済や担保提供したりしてしまいます。 これでは,破産手続開始決定を基準とすることだけでは債権者平等原則の徹底が図られない可能性があります。そこで,財産の廉価売却や贈与といった絶対的な財産減少行為(詐害行為,無償行為)や特定の債権者のみへの弁済,担保提供といった債権者間の平等を害する行為(偏頗行為)につき否認権を行使し(破160以下),逸出した財産を破産財団に取り戻します。また,価値が減少した破産債権を危機時期に負担した債務と相殺することで対当額につき100%の回収を図ることを禁止します(相殺禁止。破71・72)。 これまでに見てきた破産は,清算手続ですので,継続してきた事業を停止し,解体・清算することが原則でした。 それでは,A株式会社の経営が苦しくなり,資金繰りに窮してきた場合,破産するしかないのでしょうか。 事業は,よくヒト・モノ・カネと言われ,これがうまく回っていれば,事破産手続開始決定詐害行為偏頗行為否認

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