第1 強制競売の準備1 民事執行法上の不動産執行の位置づけと利用実態 1設問1 強制執行前の所有不動産調査所有不動産の調査方法事例1 所有不動産の調査方法1)最高裁判所司法統計(令和3年)によれば,令和3年中に申し立てられた強制執行のうち,不動産強制執行は5648件に対して,債権執行は13万6391件と20倍以上の差がある。また,担保不動産競売申立事件の件数は1万1053件と,不動産に対する強制執行の2倍近い申立てがなされている。また,東京地裁民事第21部に限れば,強制競売ヌ事件は,平成25年から令和2年まで年間400件から500件程度で推移している。1)ないというのが実情である。事例1 XはYを相手として3000万円の支払を求める確定判決を取得したが,任意の支払がなされていないため強制執行を検討している。Yはかつて会社を経営していたものの,既に高齢で仕事はしておらず,自宅は借家であることは判明しているが,自宅以外の不動産を所有しているのではないかという不確定情報があった。 Xの代理人弁護士として,Yの所有する不動産をどのように調査すればよいか。 民事執行法第2章─第2節─第1款(43条~111条)には,「不動産に対する強制執行」の定めがあり,具体的な強制執行の中で,条文上,不動産強制競売手続は最初に位置づけられている。すなわち,民事執行法上,不動産執行は基本的な執行方法として整理されているのである。 しかし,実務上は,債権執行の数の方が多く,不動産に対する強制執行の件数は少ない。さらに,不動産の強制執行の中でも,担保権実行としての競売申立(「ケ」事件)の方が多く,強制競売(「ヌ」事件)の数は極めて少
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