任財
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3将来型の任意後見契約(プラン例①)3 将来型の任意後見契約(プラン例①)⑴ 概要123相談者は、定期的に交流がある長女と任意後見契約を締結し、任意後見人に対して、自宅不動産の売却や金融機関との取引等の財産管理に関する事務、介護契約や入所契約等の身上保護に関する事務を委任し、その事務処理のための代理権を付与する。相談者が認知症となり施設入所することになった場合には、任意後見契約を発効させた上で、任意後見人が自宅不動産の売却を行い、必要に応じて、売却代金を施設入所費用や相談者の生活費に充てる。また、相談者が入院したり、施設に入所する場合は、任意後見人が代理人として契約を締結することになる。プラン例①は、任意後見制度を利用することにより、財産管理だけではなく身上保護についても、事前の対策をしておくものである。任意後見制度を利用する場合、本人の判断能力が低下する前から支援することを目的として、任意後見契約と併せて財産管理等委任契約を締結することがある。この種の任意後見契約は、移行型の任意後見契約と呼ばれている。本事例における相談者の主な課題は、認知症発症後の自宅不動産の管理処分であることから、財産管理等委任契約は締結せず、任意後見契約のみを締結する将来型の任意後見契約を利用することにした。その理由は、仮に不動産の登記名義人が財産管理等委任契約を締結していたとしても、不動産取引の実務上、本人自身で契約することが求められ、司法書士による本人確認・意思確認も代理人ではなく本人に対して行われるのが原則であり、不動産の管理処分のために財産管理等委任契約を利用する実益は乏しいからである。なお、昨今、この移行型の任意後見契約においては、適切に任意後見監督人選任の申立てがなされず、任意後見監督人不在の状況下での財産管理が行われてしまうという問題点が指摘されている。移行型の任意後見支援業務に関わる法律専門家としては、契約締結時における任意後見受任者に対する説明はもちろんのこと、任意後見契約の支援業務を終えた後も、定期的に連絡を取るなどして、適切な時期に任意後見監督人選任の申立てがなされるよう

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