任財
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第1章 自宅の管理と承継についての相談81)同意を要する旨の特約は、任意後見契約法5条4号により「任意後見受任者又は任意後見人の代理権の範囲」として登記される。任意後見人が任意後見監督人の同意を得ることなく不動産を売却してしまった場合、任意後見人は授権された代理権の制限を超過したものと解されるので、その法律行為の効力は無権代理になると解される。菅原崇・仙波英躬『Q&A任意後見の実務と裁判例―元公証人の視点から』(日本加除出版、2022)113頁。124るアドバイスすることが求められよう。できる。② 自宅不動産の売却に当たり、法定後見制度とは異なり、家庭裁判所の許可や任意後見監督人の同意を要しない。ただし、任意後見契約において、任意後見人が不動産を売却するには任意後見監督人の書面による同意を要する旨の特約がある場合は、任意後見監督人の同意が必要となるので注意を要す81)。なお、任意後見支援業務に関わる法律専門家としては、同意特約が無い場合であっても、不動産の売却のように重大な取引を行うに当たっては、あらかじめ任意後見監督人に相談すべきであることを任意後見受任者に説明することが求められる。③ 任意後見人に介護契約や入所契約等の代理権を付与しておくことにより、家族による事実上の支援ではなく、法的根拠に基づく身上保護を行うことができる。④ 任意後見契約は委任者の死亡により終了するため、相談者が遺言を作成していない限り、相談者死亡後の財産承継については、相続人である子どもらの協議によって決定することとなり、相談者の希望に沿うものとなる。相続人は、自ら相続登記等の相続手続をするか、司法書士等の法律専門家に遺産承継業務を依頼することを検討することになる。⑵ 任意後見契約を利用することによる効果① 相談者自らが、判断能力低下後の支援者や委任事務内容を決めることが

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