イ 本人と任意後見受任者に対して説明すべき事項⑶ 任意後見制度を利用するに当たっての留意点ア 任意後見監督人の報酬について3 将来型の任意後見契約(プラン例①)12582)菅原崇・仙波英躬『Q&A任意後見の実務と裁判例―元公証人の視点から』(日本加除出版、2022)44頁。任意後見契約の発効時から、任意後見監督人の報酬が発生する。相談者の財産状況や収支の状況、不動産価格、相談者が入所を希望している施設の費用等を見据えた上で、制度を利用するか否かを検討する必要がある。なお、後見人の報酬等を助成する成年後見制度利用支援事業を実施する自治体も存在するが、任意後見は対象となっていないため、任意後見監督人の報酬を支払うことができない場合は、任意後見制度を利用することは難しい。この場合、プラン②の民事信託の利用を検討するか、事前の対策はせず、必要が生じたときに法定後見制度を利用するといった対応になろう。ア 任意後見受任者の不適任により、任意後見契約が不発効となるリスク任意後見受任者に、任意後見契約法4条1項3号に定める事由があるときは、家庭裁判所は、任意後見監督人選任の申立てを却下するため、本人が締結した任意後見契約を発効することができなくなってしまう。任意後見支援業務を行うに当たっては、任意後見受任者に対し、不適任事由の有無を確認しておくことが必要である。本人に対して訴訟をし、又はした者及びその配偶者並びに直系血族が不適任とされているのは、本人と利害が相反するとともに、本人との感情の融和を欠くため、後見実務を誠実に果たすことが期待できないからであり、単に、形式上の原告・被告の関係にあるにすぎない場合は、制度の趣旨からみて「本人に対して訴訟をし、又はした者」に該当せず、訴訟が和解成立で終了82)。任意後見受任者が、した場合は含まれないと解すべきとする見解がある過去に本人との間で、何らかの訴訟関係にあった可能性もあるので、この点に関するヒアリングは念入りに行うべきであろう。
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