【図表5 任意後見人の不適任事由】① 未成年者② 家庭裁判所で免ぜられた法定代理人、保佐人又は補助人③ 破産者④ 行方の知れない者⑤ 本人に対して訴訟をし、又はした者及びその配偶者並びに直系血族⑥ 不正な行為、著しい不行跡その他任意後見人の任務に適しない事由がある者イ 任意後見人の死亡等によるリスクと予備的受任者について任意後見契約には、任意後見受任者(契約発効後は任意後見人)の死亡、病気等により、後見事務が遂行されないリスクが存在する。法定後見の場合であれば、後見人等の死亡、病気等により後見事務が遂行できなくなったとしても、家庭裁判所によって、新たな後見人等が選任される。任意後見契約の場合、任意後見人が死亡したときは、任意後見契約は終了し(民法653条)、任意後見人が病気等により後見事務を遂行できなくなったときは、任意後見契約発効前であれば公証人の認証を受けた書面によって任意後見契約を解除し、発効後であれば正当な事由がある場合に限り家庭裁判所の許可を得て任意後見契約を解除することになり、後任の任意後見人が選任されることはない。このようなリスクに備えるために、予備的な任意後見受任者を指定しておくことが考えられる。しかし、後見登記等に関する法律では、予備的受任者を登記事項とする規定が存在しないため、同一の公正証書で、第1順位の任意後見受任者を乙、第2順位の任意後見受任者を丙と定めることはできないとされている。そこで、第1順位の任意後見受任者を乙、第2順位の任意後見受任者を丙としたい場合は、甲は、乙・丙と任意後見契約を締結し、丙は乙の死亡又は病気等により、乙の任意後見人としての職務が遂行できなくなった時に家庭裁判所に対して、丙についての任意後見監督人の選任を請求するという趣旨の特約条項を設けることになる。この場合、登記上は、あくまでも乙と丙は同順位の任意後見契約となり、特約条項も登記されない。乙第1章 自宅の管理と承継についての相談126
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