はじめにはじめに〜権利擁護の担い手の法律専門家としてよりよい相談対応を目指して〜i令和元年の司法書士法改正により、司法書士法1条に「司法書士は、この法律の定めるところによりその業務とする登記、供託、訴訟その他の法律事務の専門家として、国民の権利を擁護し、もつて自由かつ公正な社会の形成に寄与することを使命とする。」という内容の使命規定が創設された。この使命規定は、司法制度改革や行政改革の基本理念に連なるものである。また、この使命規定は、司法書士が行う不動産登記、商業登記、裁判所提出書類作成、簡裁訴訟代理、債務整理、成年後見、遺産承継、民事信託支援など多様な業務の全てに通底するものであり、司法書士の行う業務の全ては国民の権利擁護に資するものでなければならない。司法書士は、これまで、主として、後見人・保佐人・補助人に就任することで、高齢者や障がい者の方々の権利擁護を行ってきたが、言うまでもなく司法書士業務はこれら後見業務に限られるものではない。これまでも、それぞれの事案や場面に応じて、遺言作成支援や生前贈与、任意後見契約作成支援や任意後見人業務、そして、民事信託支援業務などを組み合わせることで、依頼人等に寄り添い、依頼人等にとってよりよいメニューを共に考え、形にしてきた。例えば、遺言作成支援の相談を受けた際に、相談者の希望のいくつかは遺言では実現できないこともある。しかし、遺言では実現できないことも、任意後見契約や民事信託であれば実現できることもあろう。また、民事信託支援の相談として受けた事案であっても、遺言や任意後見契約によって実現できることもある。法律専門家は、相談者の希望を丁寧に聞き取り、その実現に向けた支援をする必要がある。法律専門家は、様々な手法を横断的に検討し、相談者にメリット・デメリット等を理解してもらわなくてはならない。そして、相談者
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