任財
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第4編 課題と展望264数にあり、これらの団体は、いずれも寄附を原資の一部として公益的な活動を行っている。これらの団体の活動が周知され、寄附先として選定されることが増えれば、より一層、充実した活動を行うことができる。さらに、どの程度の金額を、どのような手法で寄附すればよいのか分からないという戸惑いも見られる。一般的に、寄附は数千円程度から柔軟に行うことができる。少額からの寄附が可能であるという情報が周知されれば、一般市民からの寄附が促進されるであろう。寄附を受けることを希望している団体も、寄附に関する広報の手法について苦慮している。特に、遺言による寄附は有効な方法であるが、遺言者の死亡によって寄附の効力が発生するだけに、積極的な広報を行いづらいという問題がある。これらの課題を解決するために、法律専門家の積極的な取組が必要とされている。今後の法律専門家には、寄附に関する専門的な知見を高めることが求められる。一般市民が寄附について漠然とした印象しか持っていない場合に、適切な情報を提供することで、法律専門家が寄附を促進することが可能である。また、寄附をしたい個人と寄附を受けたい団体等をつなぐネットワークの形成や、適切な寄附先の助言、清算型遺贈等におけるスムーズな資産の換価につなげるための仕組み作り、信託会社における体制の整備など、法律専門家の果たすべき役割は大きいと言えるだろう。日本は、欧米諸国に比べると寄附の文化が根付いてないと言われることがある。また、金融資産が高齢層に偏重し、相続によって子の世代に承継される時には、子の世代も既に60歳を超えていることが多いとの指摘がなされている。この金融資産の一部でも、社会にとって有益な方法で活用することができれば、この社会は一層、活力を持つことができるはずである。寄附をすることにより、寄附者自身が、自らが社会に貢献することができる。寄附者自身が、自らの社会貢献に対して満足感を得ることができることが、最も重要である。寄附に関する社会文化を根付かせるために、法律専門家に求められる役割は大きいと言うべきである。

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