共紛
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41 共同所有の諸形態⑴ 一物一権主義 土地や建物などの一定の不動産のできる権利が所有権である(民206条)。この権利を実効性ある形で維持するためには,一つの不動産に存在する所有権は一つ(所有権者は一人)でなければならないという原則が必要となる。これが一物一権主義といわれる原則である。 一物一権主義を直接に定める規定は民法に存在しないが,所有権概念を認め,これを保障する法制度な法理となる。⑵ 特異な形態としての共同所有 一物一権主義に基づき,不動産の所有権者を一人とすることは近代取引社会の理念であるが,不動産利用の実態はそのとおりにはならない。複数の個人や企業が共同して一定の不動産を利用することは,実際の取引社会においてしばしば行われている。 そこで,複数の人が一つの不動産を共同で使用,収益及び処分する権利を有する場合を民法は共同所有と構成し,これを規律化している。2021年改正前民法においても既に民法249条以下に「共有」(第2編「物権」第3章第3節)の規定を設けていたが,2021年改正法は,さらに所有者不明土地問題の解決のために,「所有者不明土地管理命令及び所有者不明建物管理命令」(同第3(注1)(注2)(注3)第1節 共有の法律関係章第4節)及び「管理不全土地管理命令及び管理不全建物管理命令」(同第3章第5節)という新たな規定を設けている。(注1) 所有権の対象は不動産に限らず動産にも及ぶが,本書では不動産を念頭においた記述を行っている。(注2) 近代以降の民法では,この所有権の保障を財産法秩序の前提としており,「所有権絶対の原則」などと呼ばれる。そして,この「所有権絶対の原則」は民法の基本原則あるいは公理などと説明される。(注3) 新たに規定された所有者不明土地管理命令及び所有者不明建物管理命令の詳細に関しては本書Q15を,管理不全土地管理命令及び管理不全建物管理命令の詳細に関しては本書Q16解 説を自由に使用,収益及び処分することを前提とする近代以降の民法では大変,重要

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