共紛
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第1編 不動産共有の実務第1章共同所有関係の諸形態5Q 1(注4)(注5)を,それぞれ参照されたい。(注4) 共同所有の問題は,一つの物に複数の人が所有権的な権能を行使する場面の法理である。これに対し,一つの物に対して所有権とは別の物権的権能が設定される場面がある。いわゆる他物権などと呼ばれる物権群であり,所有権者以外の他人が所有権者との合意に基づき土地上に建物等を建築する地上権や,債務者の債務を担保するために債権者が設定者の不動産上に設定する抵当権などが存在する。これらの権利も一物一権主義の原則の下でも認められるが,これらの物権の創設は法律上の根拠を必要としている(民175条)。(注5) もっとも最近の民法学においては,共同所有形態の全てを三つの類型に峻別することはできないとして,伝統的な三分類説に対する批判,見直しの気運があることに注意が必要である。 この共同所有関係は,一物一権主義の原則から特異な所有関係となる。そのため,共同所有関係にある複数の権利者相互の権利関係をどのようなものとして規律するか,さらには共同所有不動産をめぐる第三者との間の法律関係をどのように調整するかが問題となる。所有者不明土地問題が深刻化するなかで,この要請はますます複雑化し,2021年改正法による立法的手当がなされたところである。⑶ 共有,合有,総有の3形態 共同所有関係の承認は,一物一権主義を貫徹することができない社会実態に照らしたものである。換言すれば社会において形成されている権利の実態に則した法理を構築する必要が他の権利にも増して強いことになる。そのような視点から共同所有関係の実態を検討した場合,その内容の相違から共同所有関係にも3種の形態があることが承認されている。すなわち,「共有」,「総有」及び「合有」の3形態である。 この3種の区別は,後述する共有持分権の有無やこの持分権の譲渡可能性,さらに共同所有する不動産の分割請求の可否などを比較,考慮するものであり,民法学上,長きにわたって認められてきた伝統的な理解である。 ここでは「共有」について説明し,「総有」及び「合有」の内容についてはQ2及びQ3に記載する。2 共有の内容⑴ 共有持分権の承認 共有とは,一定の不動産を共有する各自に共有持分権が認められ,かつ,

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