共紛
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第1節 共有のケース 一定の訴訟類型がこの固有必要的共同訴訟に該当すると判断されると,必ず原告適格を有する者全員が原告となって訴訟を提起しなければならず,一人でも欠いた場合には訴えは不適法として却下を免れないこととなる。したがって,固有必要的共同訴訟と判断される場合には,訴訟提起を望まない者が一人でもいると訴訟提起が不可能となる事態を招くことになる。また,訴訟提起後も固有必要的共同訴訟においては合一確定を可能とするために民事訴訟法40条各項が定める諸規律に従うことが要請され,訴訟当事者は厳格かつ硬直的な訴訟遂行を迫られることになる。一定の訴訟類型が固有必要的共同訴訟と判断されると訴訟遂行に困難が生じることが想定されるのである。 ところが固有必要的共同訴訟となるか否かの判断基準は必ずしも明確でなく,共有不動産に関する訴訟に関しては,訴訟類型ごとに個別具体的に判断しているというのが実態と思料される。固有必要的共同訴訟とされるケースと,そうでないケースが実務上,混在しており,共有の法的性質に着眼したうえで,これまでに蓄積された判例法理を正確に理解することが重要となるのである。⑵ 共有持分に基づいた訴訟遂行と共有権の主張 不動産を共同購入したり,あるいは相続で取得した場合,実体法上の権利関係は共有(民249条以下)とされ,共有者各自について「持分」が観念される。持分の内容についてはQ1の【解説】2に記載しているが,共有不動産に関する訴訟の場合には,この持分を法的根拠に訴訟を遂行することが可能となる。その結果,各共有者がそれぞれ単独でこの持分に基づいて訴訟を提起するという構成が可能となり,固有必要的共同訴訟性を否定する理論的根拠を与えることになる。そこで,判例は各共有者が有する持分権を根拠に単独での訴訟提起を認めるものがある。ただし,その場合にも判例は保存行為であることの指摘をしており,この点に注意する必要がある。 一方で判例は,各自の持分権にとどまらない共有権という概念を認め,一定の訴訟類型に関しては,この共有権に基づく請求として固有必要的共同訴訟となる旨を判示している。個別具体的な検討が必要となる。222

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