戸コン
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2 民法典の成立と戸籍制度2序にかえて ─ 戸籍法の沿革 上記の戸籍制度の複合的な性格を根本的に改めて,国民の身分関係の登録・公証という近代的な制度に純化したのが,明治31年,民法の親族編・相続編の施行に併せて制定された戸籍法(明治31年法律12号)である。同じ時期に,戸籍事務の中央主管庁が内務省から司法省に移管されたことが,この戸籍制度の変質を象徴している。そして,この新主管庁によって,戸籍手続の詳細を定める戸籍法取扱手続(明治31年司法省訓令5号)が定められた。これが,いわゆる明治31年式戸籍であるが,その特色は次の3点にあった。① 民法に国民の各種の身分関係に関する綿密な規定が設けられ,そのうちの特に重要な身分行為については,戸籍法の定めるところによる届出によって効力を生ずるものとされたことである。これによって,戸籍法は民法が定める身分行為を実現する手続法として位置づけられることになった。現行法制にも承継されている民法と戸籍法の連携関係は,正にこの時に形成されたのである。② 民法が国家の基礎的な構成単位として「家」を制度化し,戸籍法においても,これに対応して「家」を戸籍の編製単位としたことである。「家」とは,一定範囲の親族により構成される団体であって,その中心人物である戸主と他の家族との間の権利義務関係によってその連結が維持されるものである。全ての国民は,いずれかの「家」に属し,夫婦,親子,相続その他あらゆる身分関係において「家」による制約を受けることとされた。新しい戸籍は,このような「家」を編製単位とし,その家に属する者の身分関係を明らかにする仕組みであって,正に「家」の登録という性格を持つことになったのである。(注2)③ 「家」の登録である戸籍のほかに,西欧の先進国の制度に倣った身分登記制度が導入され,戸籍との二本建ての仕組みとされたことである。出生・死亡・婚姻・縁組などの身分事項は,まず身分登記簿に登記し,そのうち重要な身分事項を戸籍に転記するものとされた。ただし,この

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