5 現行戸籍法制定後の重要な改正5序にかえて ─ 戸籍法の沿革分関係に関する事実を迅速に把握し,これを正確に戸籍の記載に反映させて公証するという戸籍の手続に関する規定は,言わば技術的なものであって,「家」制度とは無関係に,時々の要請に応じて的確な改正がされ,全体として極めて合理的な体系に組み立てられていたのである。このため,現行戸籍法の制定当初においても,旧戸籍法の手続規定の多くが取り込まれ,現在の法制において,なお存続しているものもある。明治以来,戸籍の事務に携わってこられた無数の先人の叡智に感嘆するばかりである。 なお,旧戸籍法による戸籍の改製は,一挙にではなく,段階的に実施することとされ,その改製までは,暫定的に旧戸籍法が効力を有するものとされた。 現行戸籍法の制定後今日までの改正経過については,次に主要なものを列挙することとするが,その中でも戸籍制度にとって重要なのは,①戸籍の公開制度の大幅な改正,及び,②電子情報処理組織による戸籍事務の取扱いの導入とその範囲の拡大である。以下にその要点を述べておく。⑴ 戸籍の公開制度の改正 戸籍謄抄本の交付を柱とする戸籍の公開の制度は,明治31年戸籍法において公開の原則を規定し,「正当な理由」がある場合には公開を拒むことができるとする制度として,大正4年戸籍法,さらには現行戸籍法にも引き継がれて運用されてきた。しかし,昭和30年代以降,我が国が高度経済成長を遂げ,社会・経済生活が複雑化・多様化してくるに及んで,個人に関する高度な秘密情報を多く含む戸籍を悪用する事例が次第に増加し,従来の「正当な理由」という拒否事由のみをもってしては適切な対応ができない事態に至った。このため,昭和51年の戸籍法改正において,上記の公開原則を維持しつつ,戸籍謄抄本等の交付を請求する場合には,一定の場合を除き,その事由を明らかにすべきものとされ,市町村長は,この請求が不当な目的によるこ
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