戸コン
44/78

6序にかえて ─ 戸籍法の沿革とが明らかなときは,これを拒むことができることとされた(当時の法10条)。 このような戸籍公開に対する規制は,その後,我が国におけるプライバシー保護の要請が一段と高まるに従って更に強化され,平成19年の戸籍法改正においては,いわゆる戸籍謄抄本の第三者請求について厳格な要件が課せられ,また弁護士等によるいわゆる職務上の請求についても類型別に要件が定められた(戸10の2Ⅰ・Ⅲ~Ⅴ)。さらに,本人請求を含む全ての請求において,請求者の本人確認(代理人・使者による請求の場合には,その権限の確認)が実施されることになった(戸10の3)。 以上の立法の流れに鑑みると,我が国における戸籍公開の制度は,明治以来の「全面公開原則」の建前から,時代の変遷に応じて,近時における「第三者請求の原則非公開」へと移行してきたものとみることができる。⑵ 戸籍事務のコンピュータ処理ア コンピュータ・システムの導入 戸籍事務をコンピュータを用いて処理するシステムの導入の検討については,法務省民事局において,市町村側の強い要望に応えて昭和60年度から開始された。 明治の時代からの先人たちが営々と作り上げてきた極めて精巧な戸籍事務をコンピュータ化するには様々な難問があり,これを克服して実用化の途が開けるまでに長期間を要したが,平成5年には,東京都豊島区が実験システムを開発してその実用性が検証され,翌平成6年の戸籍法の改正によって,コンピュータを用いて戸籍事務を処理することが制度的に可能となった。もっとも,全市町村が一斉にコンピュータ化するのは不可能であったから,法務大臣が指定する市区町村から順次開始することとされ,その最初の指定が平成7年2月28日に告示された。その対象となったのが東京都の豊島区と台東区で,実際にコンピュータを用いた事務処理が開始されたのは同年3月13日であった。 以降,全国1892の市区町村において,順次コンピュータ化の作業が進められ,令和2年に,最後に残った東京都の御蔵島村にこのシステムが導入され

元のページ  ../index.html#44

このブックを見る