8序にかえて ─ 戸籍法の沿革コンピュータで処理している市町村長は,戸籍又は除かれた戸籍に記録した時は,遅滞なく,その戸籍の副本データを,電気通信回線を通じて上記の東日本又は西日本の戸籍副本データ管理センターに送信することとされた。 このシステムは,平成25年9月から稼動しているが,これにより,戸籍データの保全がほぼ万全になったほか,次に述べるように,戸籍の利用者に対する新しいサービスの展開や戸籍事務処理の迅速化も可能となったのであって,このシステムの導入は,近時の戸籍制度の改正の中でも格別に重要な意義を持つものといえる。□ マイナンバー制度への対応等 平成25年に行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律が成立し,平成26年に政府が戸籍事務をマイナンバーの利用範囲とする方針を決定したことを受けて,法務省においてこの問題が検討されてきたが,令和元年の戸籍法改正で,この問題への制度的な対応策が講じられた。その方策の根幹となるのが,法務省と他の行政機関との間で戸籍情報を行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律の定める情報連携の対象とするためのネットワークシステムを構築することであるが,ここにおいても,上記の戸籍副本データが利用されることになる。他の行政機関との情報連携の対象となる事務としては,当面,①健康保険の被扶養者の認定・検認に関する事務,②国民年金・厚生年金の未支給年金の支給に関する事務,③児童扶養手当の認定に関する事務などが想定されている。この改正法は,令和6年3月1日から施行された。 さらに,令和元年の戸籍法改正においては,法務大臣の使用に係る電子計算機と全国の市町村長の使用に係る電子計算機を通信回線で接続する新たな電子情報処理組織を構築して,上記の戸籍副本データを活用する構想も取り入れられた。この新システムの稼動により,全国いずれの市役所又は町村役場においても戸籍記載事項証明書等の交付を受けることが可能になった(いわゆる戸籍謄本等の広域交付)。また,複数の市町村長の関与を要する戸籍の届出等の処理においても,当該市町村長相互間で必要な情報を共有・参照で
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