序にかえて ─ 戸籍法の沿革手掛かりに調査すると,当該者の全ての身分事項が判明する仕組みとなっていて,当該者の身分事項の全てが実質的には1つの帳簿に記載されたものと同視することができる。 そこで,例えば,令和○年○月○日に婚姻したとの戸籍事項の記載があった場合,その日に婚姻したとの事実(積極的身分関係)が判明するのみならず,その後離婚の事実の記載がないときは,婚姻関係が継続していること(継続的身分関係)が判明する。さらには,婚姻の記載がない場合や,婚姻後に離婚の記載があるときは,その者は現在婚姻関係にないこと(消極的身分関係)も判明することになる。 また,戸籍は,夫婦及びその子を中心に編製されるため(戸6),子にとってみると,父母の従前の戸籍等を調査することにより,自己の直系尊属が全て判明し,同様に父母にとっても,子の戸籍等を調査することにより直系卑属が全て判明する。さらには,ある者のきょうだいの戸籍や配偶者の従前の戸籍等を調査することにより,傍系親族関係も判明する。このために,ある者が死亡した場合,その相続人は誰であるかは,戸籍を調査すれば判明する仕組みとなっている。さらに,これらの戸籍同士の連携により,全国の戸籍が制度上有機的に組織されているものということもできる。 このような仕組みがあるので,例えば,婚姻に際して婚姻予定公告を行わずとも戸籍の調査により婚姻要件の具備の有無が判明し,また,相続に際しても相続人調査の公告を行わずとも戸籍の調査により相続人が誰であるのかが判明し,遺産を分割することができる。 上記が日本の戸籍制度の特色であって,世界に冠たる戸籍制度であると評されることもある。18
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