21経緯があることから,原則として,市町村長が管掌することとされている(本条Ⅰ)。(注2) 戸籍法中の「市長」に関する規定については,特別区の区長並びに指定都市の区長及び総合区長に準用される(戸4)から,これらの者もまた,戸籍に関する事務を管掌することとなる。 市町村及び特別区は,その事務の一部を共同処理するため,その協議により規約を定め,一部事務組合を設けることができる(地方自治法284Ⅱ)。一部事務組合には,市町村に関する規定が準用され(地方自治法292),戸籍に関する事務は,一部事務組合の執行機関が組合に所属する市町村の長に代わって管掌することとなる。⑵ 市町村長以外の管掌者 戸籍に関する事務の管掌者を定める本条1項中に「この法律に別段の定めがあるものを除き」という文言があるのは,市町村長以外にも同事務の管掌者がいることを留保するものである。この文言は,戸籍法の一部を改正する法律(令和元年法律17号,以下「令和元年改正法」という。)により挿入されたもので,その改正前の同項は,単に,「戸籍に関する事務は,市町村長がこれを管掌する。」とされていた。これは,「戸籍に関する事務」の中心を成す戸籍の届出の受理や戸籍の記載が,市町村長の権限に属することを踏まえたものであったといえる。 令和元年改正法によって上記の文言が追加される以前においても,外国に駐在する日本の大使,公使及び領事は,戸籍の届出を受理するなどの権限を有する(戸40等)など,市町村長以外に戸籍に関する事務の管掌者があることは,想定されていた(南敏文監修=髙妻新著=青木惺補訂『最新体系・戸籍用語事典』(日本加除出版,2014)129頁)。これに加えて,令和元年改正法においては,磁気ディスクをもって調製された戸籍又は除かれた戸籍の副本は,法務大臣が保存すること(戸119の2),市町村長から提供を受けた届書等情報を法務大臣が磁気ディスクに保存するとともに,戸籍の記載をすべき市町村長に対して届書等情報の提供を受けた旨を通知する旨(戸120の4・120の第1条〔戸籍事務の管掌者等〕
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