戸コン
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1 戸籍事務処理の基準第1章 総 則 「戸籍事務」とは,法1条の「戸籍に関する事務」と同義であり,地域に住む国民に係る市町村の行政と密接な関係があること,また,明治以来,市町村が担当してきたという歴史的経緯があることから,原則として,市町村長が管掌することとされている(戸1Ⅰ)。一方,戸籍事務は,国民の親族的身分関係について,登録・公証のみならず,形成・解消にも関与する国の根幹に関わる事務であることから,国が本来果たすべき役割に係る事務であると理解されており,地域ごとに区々にわたることがない全国統一的な運用が特に強く要請される。 そこで,地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律(以下「地方分権一括法」という。)による改正前の法1条では,戸籍事務は,国がその事務の処理を国の機関としての市町村長に委任する機関委任事務とされていた。これを前提として,改正前の法3条では,「戸籍事務は,市役所又は町村役場の所在地を管轄する法務局又は地方法務局の長がこれを監督する。」として,管轄法務局長等による一般的な監督規定が設けられていた。(注1) ところが,法1条の解説にあるように(法1条の解説4を参照),地方分権一括法により,機関委任事務の制度が廃止され,戸籍事務は,第1号法定受託事務とされた(戸1Ⅱ)。そして,地方自治法245条の2において,「普通地方公共団体は,その事務の処理に関し,法律又はこれに基づく政令によらなければ,普通地方公共団体に対する国又は都道府県の関与を受け,又は要することとされることはない。」とされた。しかし,戸籍事務について全国的に統一的な運用を図ることが求められることに変わりはないことから,そのための仕組みを維持する必要があった。 本条1項は,その仕組みの1つとして,法務大臣が戸籍事務処理の基準を定めることができることとしたものである。(注2)「処理基準」とは,市町村が処理する戸籍事務の処理の方法を定めるものであり,法務省令,通達,通知等の形式で示されるものをいう。この処理基準は,法務大臣の所管に係る事30

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