激変する医療法人の運営・資金調達・承継の法律実務
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316⑴ 不動産をMS法人名義に医療法人は,職員向けの社宅・高齢者専用賃貸住宅等の限定された用途でしか不動産賃貸を行うことができない。医療法人は,社員1人が1個の議決権しか持てないため,社員間の派閥争いの激化により,事実上の経営権を失うことがあり得る。対象不動産をMS法人名義にしておくことで,不動産までの乗っ取りを防止できる。⑵ 経営者一族の相続対策医療法人は,原則として医師でなければ理事長になることができない。非医師の子または理事長になれなかった医師である子にとり,理事長になれないことによる不公平感が相続争いになる可能性がある。株式会社としてのMS法人では利益配当が可能であり,代表取締役には欠格事由に該当しなければ,特に資格はないため,理事長になれない子のために,その地位に就けることが考えられる。⑶ 医療法人経営のコスト軽減①複数の医療法人グループで医薬品を購入することなどにより,購入数量を増やし,購入単価を引き下げる場合,②定年退職した職員を再雇用するなど,勤務形態が異なる職員に業務を行わせることにより,人件費の抑制を図っている場合である。⑷ 節税対策のMS法人設立と留意点MS法人の設立目的には所得分散による節税目的が多い。しかし,事案によっては,MS法人は節税にならないことがある。例えば,内科診療所の医療法人(年間売上2億8,000万円の黒字経営)が,MS法人に家賃・医療機器リースの支払などの名目で年間3,000万円を支払っている場合,MS法人を無くして医療法人単独で確定申告をした方が,納税額は低くなるとされる2)。2 医療法人によるMS法人の利用と留意点

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