激変する医療法人の運営・資金調達・承継の法律実務
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事業譲渡①医療法人A法人の病医院P・Qのうち,医療法人B法人にQを事業譲渡,②B法人は病医院Qの新規開設手続が必要,③譲渡対象が事業の全部・重要な一部の場合,A法人では理事会および社員総会の決議⑵ M&Aによる承継手順M&Aによる承継として,次の手順における内容が検討されよう。ア)M&Aの検討・条件整理  ①問題点の確認(後継者の不在,患者数・収益減少,理事長の高齢化,医療法人存続の意義等),②アドバイザリー契約の締結,②事業価値評価(財務内容,他のM&A事案,医療業界の現況等),③承継方法の検討(医療法人の所有財産の整理,譲渡対象財産の選別,納税額のシミュレーション等),④承継金額の決定(時価純資産法により貸借対照表の帳簿価格のうち,不動産鑑定評価額で計算,退職債務等の簿外債務の負債計上,営業権を営業利益の3年〜5年分の金額で算定等)などである。イ)譲受法人の候補選択  ①対象医療法人に関する情報収集,②譲受法人の候補選択,③譲渡法人に関する匿名資料(ノンネームシート)作成,④譲渡法人と譲受法人との秘密保持契約の締結,⑤法人名記載の概要書作成書などである。ウ)条件交渉・基本合意  ①理事長同士の面談,②譲渡条件の提示・作成,③条件交渉(出資持分・資産等の譲渡希望金額,役員の退職金支給額,職員の処遇等),④譲渡価格の修正基準・合意破棄時の違約金額,⑤基本合意契約書の作成などである。エ)デューデリジェンス  ①財務・法務・労務・事業の各監査1)(損益状況,簿外債務の有無,外来・入院患者の動向,診療圏,企業価値,建物の耐震補強工事の必要性,地方厚生局への設備基準の届出,医療従事者との雇用契約,未収金の管理状況,医薬品等の棚卸等),②最終価額の決定などである。1)医業経営研鑽会編著,西岡秀樹監修,小山秀喜・岸部宏一・小島浩二郎・池田宣康著『病医院の引き継ぎ方・終わらせ方が気になったら最初に読む本』(日本法令・2019)204・205頁。404

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