Ｍ＆Ａによる承継は，後継者問題，Ｍ＆Ａにおける考慮要素，譲受ニーズのある医療法人について検討する。オ）クロージング ①最終契約書（前提条件，各当事者の義務，表明保証条項，⑴ 後継者問題従来は，理事長の子が医師となり，大学病院または他の医療機関等の勤務医を経て，親の病院を継ぐことが多かった。しかし，病院経営の環境変化（医療法人間の収益性の格差，人件費の高騰，労務管理の困難性，患者ニーズの多様化，設備投資の負担等）により，子が病院経営を引き継がないことが増えている。医療法人の設備更新（病院等の建て替え等）が近い将来に実施される場合，医療法人の承継は負債の承継といえる側面がある２）。また，後継者問題には地域差があり，地方都市は患者・医療従事者の確保がより深刻であるとされる。⑵ Ｍ＆Ａにおける考慮要素Ｍ＆Ａにおける考慮要素として，次のことがある。①診療報酬改定で医療療養型病床の診療報酬が引き下げられ，収益が低下しながら，近隣に新しい医療法人の開院，②設備老朽化による投資費用の増加，③医療従事者への待遇コストの増加対応，④医療法人内に後継者候補の不在，⑤事業モデルの見直し（介護業務の構築・施設新設・介護会社および他の病院との連携）の切迫性，⑥負債額を無視した年間売上の匹敵する譲渡価額（プレミアム価格の高額設定）の高額設定の是非，⑦Ｍ＆Ａにおける行政対応，⑧損害補償条項等の確認）の作成・交付，②代金決済，③事業引渡しなどである。２）矢野好臣・余語光『医師・看護師を守り地域医療を存続させる病院Ｍ＆Ａ』（幻冬舎・2020）19・20頁。第１章 医療法人等の承継類型別の検討課題405２ Ｍ＆Ａによる承継課題
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