激変する医療法人の運営・資金調達・承継の法律実務
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464個人医院の資金調達は,金融機関からの借入れが中心となり,経営者である医師個人の信用力に依存する。他方,医療法人では資金の借入れにおいても理事長個人の信用力に依存するのではなく,資金の調達方法・調達先が多様化している。その結果,施設規模の拡大および充実が可能となる。他方,医療法人では,医療法人名義の資産に係る相続税または贈与税の課税はない。後継者を理事に就任させておくことにより,医療法人の理事長の死亡に際し個人医院より安定的・円滑な運営ができ,医療施設の永続性は容⑴ 資金調達の多様化医療法人等の資金調達の方法として,①資金の借入れ,②医療機器等のリース,③助成金・補助金制度の利用,④医療法上の資金調達制度,⑤診療報酬債権の流動化,⑥不動産流動化・証券化による資金調達などが考えられる(本編Ⅱ第2章1節)。⑵ 税制の優遇措置個人医院(医科・歯科)では所得税の累進税率として5〜45%が適用される。他方,医療法人では法人税の2段階比例税率が適用される。例えば,所得金額800万円以下の部分は15%,所得金額800万円超えの部分は23.2%(平成28年4月1日以前の開始事業年度では23.4%)であり,累進税率の適用外となる。また,役員報酬に対して給与所得控除があり,法人および役員の両方で必要経費の控除が可能となる。生命保険料の全額またはその一部が法人で損金算入となる。⑶ 運営主体の永続性個人医院(医科・歯科)の経営者である医師が死亡した場合,①閉院手続,②後継者となり医師就任に関する保健所への開設手続,③金融機関との経営者保証に係る交渉,④相続税または贈与税の課税があり,後継者への承継が困難を伴うことがある。2 医療法人設立の選択意義

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