激変する医療法人の運営・資金調達・承継の法律実務
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おける検討要素として,次のことが考えられる。第1に,デッドロックの発生が客観的・具体的に判定できること(認定要素)が前提となろう。例えば,a)理事の人事案件の拒否,b)必要な資金の金融機関からの借入不能,c)事業遂行が困難となる予算策定などがある。第2に,社員間契約においてデッドロックの概念を明確化しているのであれば,社員間契約でデッドロックを解散事由とすることには問題はないであろう。502⑵ 自発的解散の事由社員間契約等により,デッドロック発生時に自発的解散とする。例えば,P社団医療法人では社員X派閥と社員Y派閥が同数で対立している。①社員総会の決議時点において,社員名簿に記載された総社員が賛成しない限り,(理事選出等の)議決権は法的効力を有しないこと,②「総社員が賛成しなくても決議有効である」旨の社員間契約の規定への変更に反対する者が,社員のX分の1以上であるときは,当該法人は解散事由が発生したものとして解散すること,③解散事由が発生したものとみなされる時点における理事長は解散手続を執ることなどが考えられる。⑶ 自発的解散の課題デッドロックが生じたことを解散事由として社員間契約を締結する場合に⑷ 検討される他の対応策ア)協議機関の設置義務  デッドロックの発生により直ちに解散事由とする以外に,社員間契約により,任意組織である社員間協議会等の設置を義務付けるものとする。社員間協議機関における解消策が提案できない場合,関係者による持分買取り,法人売却,法人解散等という次の段階に進むことを取り決めておく。イ)持分買取り  デッドロックの解消方法として,関係者に対象法人の持分譲渡を社員間契約に定めておく。譲渡先として,①社員間契約の当

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