第11第章第1章 第1 コーチングとは何か―弁護士が取り入れる意義― 1本書のタイトルは「弁護士業務の視点が変わる!実践ケースでわかる依頼者との対話42例 コーチングの基本と対応スキル」です。著者がそれぞれ弁護士としての業務においてコーチングを取り入れることの効果や今後の可能性を読者のみなさんに共有したいという思いを示したものでもあります。一方で、コーチングはまだ法律家にとって馴染みの深い概念とはいえません。そこで、本編の各事例に入る前に、コーチングとは何か、その意義と、弁護士が活用するメリットについて解説します。コーチングとは、対話を通じて、クライアントの目標や未来像を明確にし、クライアントの可能性を引き出し、その思考と行動を促進する関わりを体系化したものです。コーチの語源は「目的地へ連れて行ってくれる馬車(coach)」に由来し、コーチはクライアントに適切な質問を繰り返しながら、クライアントが実現したい目標は何か、そのためには何が必要で、どのように行動すればいいのかなど、クライアント自身の気づきを促す関わりをします。より具体的には、コーチは「答えはクライアント自身の中にある」「クライアントには目標を実現する能力と可能性がある」というマインドでクライアントに接し、「傾聴する」「承認する」「質問する」「フィードバックする」「提案する」などのコミュニケーションを重ねることで、クライアントが自ら納得のいく判断や行動を起こし、その目標や未来像に近づいていけるような支援を行います。本書では、これらのスキルのうち、主に「傾聴する」「承認する」「質問する」のスキルを中心に、依頼者との関係を高める具体的な視点を取り上げていコーチングとは何か ―弁護士が取り入れる意義―総 論
元のページ ../index.html#13