1 傾聴「傾聴する」スキルとは、相手の話に関心を持ち共感を示しながら聴く会話のスキルです。傾聴において大事な点は、相手の言葉だけでなく存在自体を受容する態度です。その意味で、「傾聴」とは単なるスキルにとどまらず、相手の存在自体に向き合おうとする姿勢または私たちの在り方そのものということもできるでしょう。なお、「傾聴」は英語でアクティブ・リスニングといいます。これは、傾聴とは一種のアクション(行為)であることをわかりやすく示しています。つまり、こちらが聴いていることが相手に行為として表現される点が重要だということ、こちらがいくら聴いていても、それが相手に伝わらなければ「傾聴」の効果は得られないという意味でもあります。ます。これらのスキルには、それぞれ固有の機能や効果があります。なお、こうしたスキルの前提として、まずは、理解しておきたい理論があります。アメリカの心理学者アルバート・メラビアンによって1971年に発表された、「7-38-55ルール」あるいは「メラビアンの法則」と呼ばれる法則があります。この法則によると、人はコミュニケーションで相手から100の情報を受け取るときに、相手から発せられる言語の内容である「言語情報」(セリフそのもの)から7%、声のトーンや口調、大きさ、話す速さなどの「聴覚情報」から38%、そして相手の姿勢や、視線、表情といった「視覚情報」から55%の情報を受けとっています。このうち、言語情報以外の情報を総称して非言語的メッセージといい、全体の93%を占めます。つまり、私たちは、言語情報よりも非言語メッセージによって大きな影響を与え合っており、その93%をどうコントロールするかによって、コミュニケーションは大きく変わってくるということです。この理論に対しては諸説あるところですが、「はい」というひとつ返事でも、笑顔で明るく言われるのと、不機嫌そうに目をそらして言われるのでは、伝わり方が異なります。コミュニケーションにおける非言語的メッセージの大きさは、多くの人が納得するところでしょう。傾聴を実践するにあたりこれを前提に、重要なポイントを3つ挙げます。① 姿勢を整え、表情に責任を持つまずは姿勢です。しなやかに背筋を伸ばし、姿勢を整えて相手に向き合いましょう。姿勢を相手に向けて整える行為は、こちらにとってセットアップの意2 第1章 第1 コーチングとは何か―弁護士が取り入れる意義―
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