第1章 第1 コーチングとは何か―弁護士が取り入れる意義― 3味を持っています。背筋を伸ばし、しっかりと顔を上げて相手に向き合う姿勢を整えることで、「今からこの人に向き合うのだ」「この人のための時間を始めるのだ」というマインドセットがしやすくなります。また、相手には「この人は、自分にしっかり向き合ってくれる人なのだ」という印象を抱かせます。そして、人は、互いの表情から大量のメッセージをやり取りしています。相手が微笑むとホッとする安心感や嬉しい気持ちが生まれます。しかめっ面や怪訝そうな表情を見ると、不快感や不安を感じます。これは、人間には、視覚的に得られた相手の表情のメッセージを脳がとらえて、安心や不安、恐怖などの感情を惹起する仕組みが備わっているからです。つまり、私たちは、相手のわずかな眉間の動きや微妙な口角の変化を敏感に察知し合い、その結果によって、意識的ないし無意識に思考や行動を選択しているのです。表情一つが与えるメッセージはあまりに大きいものです。私たち弁護士も、表情によって相手に様々な影響を与えています。眉間にしわを寄せる、思わず首をかしげる、また、無表情さも、相手に思わぬ不安や不快感をもたらし、ひいては、相手の話を止めてしまうこともあります。弁護士のもとへ相談に訪れる人の多くは、不安や苦痛を抱いているものです。また、その悩みに加えて、弁護士に会うこと自体に緊張や不安を感じていてもおかしくはありません。こうした不安を軽減するも、増大するのも、弁護士の関わり方次第でもあります。表情のコントロールは弁護士の仕事上の重要なスキルと言っても過言ではないでしょう。相手に安心感をもたらします。タイミングよく適度にうなずきや相槌を入れることで、スムーズなやりとりが可能になります。なお、相槌を入れずに質問ばかりを続けると、いわゆる「尋問」的なやりとりになってしまいます。弁護士② 視線を意識する自分の視線の状態を意識しておくことも大切です。相手にしっかり視線を向けることによって、「この瞬間、私はあなたを最優先している」というメッセージが相手に届きます。逆に、視線を合わせず、時計や自分のメモばかりを注視していると、相手は、自分の話を聴いてくれているのかという不安を抱きやすくなります。③ 適切なうなずき・相槌をする3つ目は、うなずき・相槌をしっかりと入れることです。うなずきや相槌は、
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