1 依頼者の思考や感情を整理し、決断や行動を促進する弁護士のもとを訪れる相談者は、自分はどうすればいいのか分からず、不安を抱き、混乱した状態にあることが多いものと思います。そんな相談者に対しては、傾聴や承認などの手法を用いて、感情や思考の整理を促す関わりが効果的です。第2あるということです。依頼者は法的アドバイスが欲しいと思うのと同時に「この不安をわかってほしい」「安心したい」と思っていることもあります。法的アドバイスだけでなく、心に向き合うことも必要となるのです。コーチングを取り入れることで、依頼者自身が、本当の願いや課題を見出すことのサポートをすることができるようになります。弁護士は依頼者の真の目的に向かって、法律の専門家としてはもちろん、対人支援に携わる者として伴走し、共に歩むことができるようになるでしょう。コーチングを学び、実践していくと、依頼者とのコミュニケーションは法的アドバイスをするだけの場から、依頼者の深い感情や意図を掘り起こす場に変容していきます。依頼者の中に渦巻くネガティブな感情を俯瞰する、依頼者の視点を現在の辛い状態から未来へ移動する、選択肢が狭められている視野を広げるなど、様々なコーチングスキルを用いることで、依頼者から「納得する決断ができ、すっきりしました」「事件の見え方が全く変わりました」「ここまで理解してもらえるとは思いもしませんでした」「先生に依頼して本当によかった」といった言葉を受け取ることが増えていきます。依頼者にこのような変化が起きるかどうかは、相談や受任後の期間の長短に必ずしも関係はありません。弁護士の関わり方ひとつで、受任後間もない時期であっても、しっかりとした信頼関係を醸成することは十分に可能です。これまで多くの依頼者とコーチング的関わり方をしてきた私たちが考える、弁護士がコーチングスキルを取り入れるメリットは次の3つです。6 第1章 第2 弁護士がコーチングを取り入れるメリット弁護士がコーチングを 取り入れるメリット
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