3 弁護士のウェルビーイングが高まるコーチングを取り入れる効果は、依頼者との関係性のみならず、弁護士自身第3のあり方や仕事や人生における充実感にも現れます。弁護士は依頼者の代理人として困りごとを引き受け、時には紛争の最前線に立つ必要のある仕事です。権利関係を扱い、人生の選択に大きな影響を与える立場であることもまた事実です。そのような重責を担う仕事の性質上、多くのプレッシャーにさらされる経験は一度や二度ではないでしょう。それでも弁護士であることを選択し続ける時、依頼者のみならず、弁護士自身が良い状態であること、つまりウェルビーイングが大切だと私たちは考えます。ウェルビーイングといえば、WHO(世界保健機関)による「身体的、精神的、社会的に満たされた状態」との定義が有名ですが、一言で言うならば、自分らしく良い状態でいられる幸せな状態です。ウェルビーイングは、ポジティブな感情(Positive)、充実感(Engagement)、人間関係(Relationship)、意義(Meaning)、達成感(Accomplishment)の5つの要素によって高めることができると言われています(PERMA理論)。弁護士にとっても、依頼者との関係性が良くなることで、ポジティブな感情や充実感が増し、仕事の意義や達成感が得られる結果、そのウェルビーイングは高まるといえるのではないでしょうか。私たちは、それぞれに試行錯誤を重ね、重責を担う弁護士としての仕事を全うしながら、ウェルビーイングな状態を実現していけることを実感しています。それを可能としてきたものが、依頼者と対等なパートナーシップを築き、本来の力を引き出し、共に解決を構築する関わり、すなわち、本書に表れるコーチング的関わり方なのです。第1章では、コーチングの基本的な知識と、弁護士業務に取り入れるメリットについて解説しました。8 第1章 第3 本書の構成本書の構成
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