10_対話
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1 初めて相談に来る人の心理状態を理解する法律事務所にやってくる相談者のほとんどは、人に言いづらいような悩みや弁護士:そうでしたか、借金があったところ、先月解雇になったということですね。塾代やご自宅のこともお気がかりかと思います。もし差し支えなければ、いくつかこちらからご質問する形でお尋ねしてもよろしいですか  ※3。遠慮なくお話してくださいね  ※4。では、よろしくお願いいたします。まず、借入先は……。不安を抱えています。そして、大抵の人にとって、法律事務所は縁遠い存在で、街医者のように、通りすがりや飛び込みで相談に来るという人はほとんどいません。多くの場合、インターネット検索や、知人からの評判を調べるなどして法律事務所を探して選び、わざわざ予約を取って法律事務所を訪れます。ここまでの手続だけでも一苦労です。そして、やっと法律事務所にたどりつくと、受付から奥に案内され、相談室で一人待たされることになります。この状況は、待ち時間の長短にかかわらず、相談者の緊張や疲労を高めるということを、まず弁護士はよく理解しましょう。この理解を前提とすると、最初の一言も違ってきます。〔効果的な関わり方〕の例では、こんな言葉を弁護士がかけています。「お待たせしました。弁護士の○○と申します。よろしくお願いします。今日は、お忙しい(暑い、寒い、雨天の)中、よくおいでくださいました  ※1」12 第2章 第1 相談者との関係性の構築としなくても大丈夫です。今日は60分しっかりお取りしていますので、一つずつお話しくださればと思います  ※2。相談者:わかりました。もともと借金があったのですが、先月仕事をクビになって返せなくなってしまって、子どもの塾代だけは払ってやりたいですが、あと、家は手放さないといけないのか、それも気になってて…。相談者:はい、お願いします。弁護士:ただ、私が質問している時でも、言いたいことや疑問が出てきたら、解 説

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