2 「〇分、しっかりお取りしています」相談者が緊張していてうまく話せない場合や、混乱している様子が見られたら、とにかく少し落ち着いてもらう工夫も必要です。特に、事案に関する経緯や事情が複雑な場合は、相談者からすれば、何から話したらいいのか戸惑う気持ちも自然なことです。3 定型的な相談類型ならば、弁護士から質問を開始してもよい相談者は、いろいろな不安を抱えているため、話し出すと、とめどなく話が01 初めての相談に緊張を感じているとき 13ポイントは、弁護士の方から、明るくはっきりとした声で名前を名乗り、挨拶から始めることです。そして、わざわざ法律事務所まで足を運んだ相談者をねぎらう一言を入れると、相談者も一息ついて安心し、場も和むでしょう。逆に、挨拶もそこそこに「今日は何の件ですか」とすぐに始めてしまうと、緊張状態にある相談者を問い詰めているような形になりかねません。弁護士からすれば当たり前の状況でも、相談者からすれば、緊張や不安を抱いて臨んでいるということを忘れないようにしましょう。そこで、弁護士から相談者に対して、こんな一言を伝える工夫もあり得ます。「今日は60分しっかりお取りしていますので、一つずつお話しくださればと思います ※2」この一言で、焦らなくてもいいのだ、という安心感が生まれます。「○分しかないので早く話してください」と言うのとは真逆の効果です。また、「〇分、しっかりお取りしている」という表現には、ゆっくり話しても大丈夫だというメッセージとともに、改めて、相談時間の枠組みをお互いに意識できるという二次的なメリットもあります。特に、初回の法律相談は話が長引きがちです。弁護士としても、相談者の話が展開していく中で、どこが法的なポイントなのかをつかみきれずに時間が過ぎていき、話の広がりに戸惑うこともあるでしょう。その結果、時間を延長することになったり、逆に、相談の途中で時間切れになることは、お互いにとって望ましくありません。そうした状況を避けるために、「今日は○分の相談時間をしっかりお取りしています」というポジティブな表現の中で、逆に、限られた時間を一緒に有効に使っていきましょう、という共通のマインドセットを持つ意味も含まれています。
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