はしがき iiiいて、どのようにコミュニケーションをとることが効果的か、私たちが実践してきた、依頼者自身が納得する本質的な解決へ向けサポートする工夫について、ケースごとにご紹介します。それぞれのケースは、「よくある対応」「悩みどころ」「効果的な関わり方」「解説」という構成になっています。「よくある対応」には、多くの弁護士がするであろう対応が書いてありますが、それは必ずしも誤りというわけではなく、むしろ法律的には正しい対応例が書いてある場合もあります。それでも、依頼者への本質的な支援になっているかという観点から弁護士が感じる課題を「悩みどころ」に書きました。それを踏まえて「効果的な関わり方」では、私たちが提案する会話例や働きかけ方を展開し、それに続いて、「解説」では、なぜそのような関わり方が効果的なのかを、会話例に対応させながら記述してあります。この「効果的な関わり方」と「解説」は私たちなりの探求や実践経験のなかで生み出された一つの提案であり、読者によっては新鮮に感じる箇所もあれば、異論のある箇所もあるかもしれません。私たちもこれが唯一の正解という意図ではありませんが、それでも4人で推敲や実践を重ねた結晶であることは間違いありません。ぜひ臨場感をもって本書を味わっていただければと思います。本書は、依頼者の悩みに真摯に向き合う中、コミュニケーションの難しさに課題を感じているすべての弁護士の方に手に取ってもらいたい、そのような思いで上梓いたしました。ケースごとの対応事例では、私たちが学び弁護士業に取り入れてきたコーチングをはじめとする対人支援に役立つスキルのエッセンスが随所に散りばめられています。また、本書は依頼者とのコミュニケーションを扱う書籍であるため、弁護士のみならず、司法書士、税理士などの士業をはじめ、広く対人支援に関わる方々にもお役立ていただけましたら幸いです。 令和6年10月執筆者一同
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