司行
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序1第1 はじめにどのように規律され,適用されるか─石 田 京 子(早稲田大学教授)(以下「旧倫理」という。)を改正する形で制定され,2023年(令和5年)4月 2022年(令和4年)6月に行われた第87回日本司法書士会連合会定時総会において,司法書士の法専門職としてのルールである行為規範を定めた「司法書士行為規範」(以下「行為規範」という。)が従前の「司法書士倫理」1日より施行されている。従前の旧倫理が全14章92条で構成されているところ,行為規範は全15章102条で構成されており,司法書士としてとるべき行動がより具体的に規定されている。 司法書士法上の懲戒は,司法書士法47条で「司法書士がこの法律又はこの法律に基づく命令に違反したときは,法務大臣は,当該司法書士に対し,次に掲げる処分をすることができる」と規定されている。行為規範は法律や命令ではないので,ここに定められた規定に違反した行為が直接懲戒事由を構成するものではない。しかしながら,司法書士法で定められている,司法書士として「公正かつ誠実に」業務を行う義務(法2条)の解釈においては,当然のことながら,行為規範を遵守した行動であったかどうかは問題とされるであろう。また,民事上の責任を問う場面(過誤事件など)においても,司法書士の注意義務の具体的内容として参照されることはあり得る。その意味では,行為規範も懲戒事件や過誤事件と無関係ではない。以下ではこのことを踏まえて,今般,旧倫理が「司法書士行為規範」とその名称を含め大きく改められた背景,その主要な変更点を概観した上で,実際の事例において専門職倫理のコアヴァリューがどのような意味をなすのかを本書籍所収の事例を取り上げて検討する。第1 はじめに司法書士行為規範─専門職倫理のコアヴァリューは

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