序 司法書士行為規範1)本改正においては,使命規定の新設に加えて,①懲戒権者を法務局又は地方法務局の長から法務大臣に改めることを中心とした懲戒手続に関する改正(47条以下の懲戒に関する規定)及び②社員が一人の司法書士法人の設立を認める改正(44条,44条の2)も行われている。211「司法書士倫理」から「司法書士行為規範」へ 既に述べた通り,行為規範は2022年(令和4年)6月に行われた第87回日本司法書士会連合会定時総会において,旧倫理を改正する形で制定された。旧倫理は,いわゆる司法制度改革の中で2003年(平成15年)に制定されたものである。司法制度改革は,日本における司法制度の在り方のみならず,法専門職の在り方全般にも大きな影響を与えた改革である。司法書士制度との関係では,司法書士に対する簡裁代理権の付与やADR法制定による認証制度の創設など,司法書士の職域を大きく拡大するとともに,法専門職としての司法書士に対する社会の期待をより大きなものとした。その期待に応えるべく制定されたのが,旧倫理であった。 もっとも,旧倫理の制定から20年が経過し,この間,司法書士を取り巻く状況は大きく変容した。特に2019年(令和元年)の司法書士法改正は,司法書士の社会に対する責任をより一層大きなものとした。この改正により,司法書士法1条では「司法書士は,この法律の定めるところによりその業務とする登記,供託,訴訟その他の法律事務の専門家として,国民の権利を擁護し,もつて自由かつ公正な社会の形成に寄与することを使命とする。」との使命規定が定められることになった。1)本改正により,司法書士は,「法律事務の専門家」として,「国民の権利を擁護し,もつて自由かつ公正な社会の形成に寄与すること」がその使命であると法律上宣言したのである。 さらには,今日,財産管理業務や空き家問題・所有者不明土地問題への対応など,司法書士の業務範囲は大きく拡大している。例えば,所有者不明土地問題が全国各地で深刻化し,国政で取り上げられるようになり,令第2 行為規範制定の経緯
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