司行
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序章 名称・前文(憲97条)。6)『注釈法』33頁7)『解説規程』4頁8)平成31年4月11日参議院法務委員会,仁比聡平議員の質疑に対する山下貴司法務大臣の答弁9)『解説規程』4頁記されていなかったところ,同改正により,司法書士法にその使命が明記されることとなった。この改正により,司法書士の使命は,国民からの負託によるものであることが明確になるとともに,条文上も主語が「司法書士は」と変更されたことに表れているように,一人一人の司法書士が主体となって国民の権利を能動的に擁護していくことが明確となった。 また,司法書士法1条の「国民の権利を擁護し,もつて自由かつ公正な社会の形成に寄与する」との表現は,「弁護士の使命規定(弁護士法1条)と共通している」と指摘されている。6)弁護士法1条は,「弁護士は,基本的人権を擁護し,社会正義を実現することを使命とする。」と定めているところ,ここでいう「基本的人権」とは憲法11条及び97条に定めるところと同義とされる。7)すなわち,人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であって,過去幾多の試練に堪え(憲97条),侵すことのできない永久の権利として現在及び将来の国民に与えられ(憲11条),信託されたものである そして,司法書士法の使命規定の「国民の権利」も,弁護士法と同様に,「権利」には憲法上の基本的人権を含むことが法案審議の際の法務大臣の答弁でも確認されている。8) さらに,弁護士法のいう「社会正義」とは,正義の概念が多義的であるところ,少なくとも「弁護士にとっての『正義』は,基本的人権の保障を中心とした憲法理念を職務のうえで具現していくところにあると認識することをもって最大公約数とすると考えられている」。9)そして,司法書士法の使命規定の「自由かつ公正な社会」も,これと同様に考えることができる。司法書士は,その職務を通じて,様々な考え方を持ち多様な生き方を求める人々が,お互いの存在を承認し,尊重しながら,そのかけがえのない人生を誇りと尊厳をもって全うできる社会の形成に寄与することが求められている。26

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