第1章【事例1-1】 秘密保持義務①(戸籍の開示)169【事例1-1】 秘密保持義務①(戸籍の開示)⑴ 令和5年〇月,司法書士甲はAから,Aの父名義の土地の相続登記の依頼を受けた。父は昭和〇〇年に亡くなっている。そして,父にはAを含め子が8人いたが,現時点ではA以外の7名は既に亡くなっており,現在,相続人又はその地位を承継した者は全部で18名であるという。今回,相続人全員で協議し,父名義の土地を建売業者Bに売却し,売買代金は法定相続分で分けることが決まったという。売却の前提として,法定相続人全員に委任状を送付して,各人への法定相続分による相続登記を進めてほしいというものであった。⑵ その後,司法書士甲は相続人から委任状を受領して準備を進めていたところ,買主となる建売業者Bの担当者Cから次の連絡が入った。Cは,司法書士甲に対して,「相続登記はいつくらいに申請できるのか?」,「代金決済は先でも構わないが,契約締結は急ぎたい。」,「社内規程で契約締結の社内決裁に相続関係戸籍一式が必要になるのでコピーを提供してくれないか?」と述べた。 司法書士甲は,Cに対して,相続関係戸籍一式の開示に応じてよいだろうか?関係条文 法24条(秘密保持の義務)╱行為規範11条(秘密保持等の義務)論 点 秘密保持等の義務総論・依頼者応対関係
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