司行
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第1章 総論・依頼者応対関係5)『法曹の倫理』56頁【事例1-2】 秘密保持義務②(文書提出の拒否・証言の拒絶) 司法書士甲は,依頼者である株式会社Aから,定期的に不動産登記の申請事件及び役員変更登記の申請等の商業登記の申請事件を受任している。① 株式会社Aに税務署の税務調査が入ったことにより,税務署から甲に対して,受任した事件について資料の提供を求められた。甲はこれに応じて問題ないか。② 株式会社Aは,司法書士甲が受任した事件に関して民事訴訟事件の被告となり,甲に対して,裁判所から証人尋問の呼出状が届いた。甲はこれに応じて問題ないか。関係条文  法24条(秘密保持の義務)╱行為規範11条(秘密保持等の義務)論  点 秘密保持等の義務コメント 行為規範11条2項では,司法書士の秘密保持義務を解除することができる「正当な事由」を例示している。本事例では,秘密を開示することができる具体的な場面を想定して「法令に基づく場合」(2号)を考察する。1 文書提出の拒否 司法書士が受任した事件について,文書提出命令等(民訴223条)や文書送付の嘱託(民訴226条)などを受けたときは,原則として秘密保持義務が優先すると考えられ,依頼者の承諾がなければ秘密を開示することはできない。5)本事例のように,依頼者に税務署の税務調査が入り,司法書士が反面調査を受け,受任した事件について資料の提供を求められた場合,依頼者の承諾などの秘密保持義務が解除される正当な事由(行為規範11条2項)172

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