はしがきi(改正前司法書士法1条)から,「司法書士は」へと変更されたことに表れて 令和4年6月に開催された第87回日本司法書士会連合会定時総会において,司法書士倫理の一部を改正する議案が全会一致にて承認されました。改正前の司法書士倫理は,簡裁訴訟代理権を有することとなった司法書士の職業倫理として平成15年に制定されたものです。今回の改正は,約20年ぶりの大幅な改正となり,その名称も「司法書士行為規範」へと変更され,令和5年4月1日に施行されました。 今回,司法書士倫理がこのように大きく改正された背景として次の2点を指摘することができます。 第一に,令和元年司法書士法改正による使命規定の創設です。令和元年司法書士法改正に至るまで,司法書士の使命は司法書士法に明記されていなかったところ,同改正により,司法書士法にその使命が明記されることとなりました。すなわち,「司法書士は,この法律の定めるところによりその業務とする登記,供託,訴訟その他の法律事務の専門家として,国民の権利を擁護し,もつて自由かつ公正な社会の形成に寄与することを使命とする」(司法書士法1条)というものです。 この改正により,司法書士の使命は,国民からの負託によるものであることが明確になるとともに,条文上も主語が,それまでの「この法律は」いるように,一人一人の司法書士が主体となって国民の権利を能動的に擁護していくことが明確となりました。 そこで,令和の時代における使命を全うする司法書士像を,司法書士の専門職倫理においても明確に位置づける必要がありました。 第二に,改正前の司法書士倫理制定以降の司法書士業務の拡大・多様化です。前述のとおり,改正前の司法書士倫理制定は簡裁訴訟代理権を有することとなったことを契機としていますが,その後20年近くが経過するなかで,司法書士業務は,簡裁訴訟代理等関係業務に加え,成年後見業務や財産管理業務,民事信託支援業務など,拡大・多様化してきました。このはしがき
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