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2では,一つの論点を深く調査して,まるで学者が論文を書くかのように詳細に報告したところ,「結局この事案でどうすればよいのかが分からない」等として否定的に評価されるかもしれません。 そこで,本書はそのような広い意味ではなく,読者の皆様が実務で直面するような,具体的事案を踏まえ,具体的問題意識の存在を前提とした法律に関する情報・資料の調査について述べることとします。そして,3及び4で後述のとおり,このようなリーガルリサーチには,リスク管理上の意義があります。よって,本書において「リーガルリサーチ」というときはそのようなものを念頭に置くこととします。2 リーガルリサーチが必要となる場面 上記1においては,リーガルリサーチは,具体的事案を踏まえた具体的問題意識の存在を前提に行うと述べました。とはいえ,具体的にどのような場面なのかについてイメージが湧かない人もいるかもしれません。そこで,以下,いくつか具体的な場面を例示しましょう。場面1:交通事故案件を事務所で受任し,依頼者である被害者は損害の内容として様々なことを主張している。新人弁護士Aが示談交渉の担当として割り当てられた。場面2:営業部門が顧客から既に締結済みの契約の期間を延長する覚書を締結せよと言われ,覚書作成を法務部門に依頼する。新人法務パーソンBが法務部門内で担当者に割り当てられた。場面3:CS(=CuStomer ServiCe)部門が,販売した製品の問題で事故が起こった旨のクレームがあったとして法務部門に相談する。新人法務パーソンCが法務部門内で担当者に割り当てられた。 これらいずれの場面であっても,新人弁護士・法務パーソンA,B及びCは,目の前の案件について予防法務対応や紛争解決法務対応を行うことを求められています。 そして,そのような対応をする際に,悩ましい法的な問題が生じる可能性があります。場面1のAについていえば,そもそも法的に主張できない損害もあるでしょう。また主張はしても,示談の際には諦める「交渉の余地(ネゴ代,交渉代等)」とすべき損害もあるでしょう。そこでどの範囲の損害を主張すべきか等という問題意識を持つかもしれません。場面2のB第1章 リーガルリサーチの見取り図

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