3についても,例えば3か月で300万円の業務委託という原契約について単に「3」か月を「4」か月にするとか,業務遂行期間の終期を4か月が満了する日にするだけで足りるのだろうかという問題意識を持つかもしれません。場面3でCは,確かに顧客の誤使用が原因の事故だが,誤使用というだけで責任を免れることができるのだろうかという問題意識を持つかもしれません。 これらはあくまでもいくつかの例にすぎませんが,まさにこういった具体的な状況においてリーガルリサーチが必要となります。 場面1であれば,リサーチをすることで交通事故案件において相当因果関係のある損害として認められるものの類型に入っているかや,仮に類型としては損害として認められ得るとしても,その立証のためにどのような証拠が必要か等が分かります。また,場面2であれば,リサーチをすることで,単に契約期間を延長するだけだと,「契約期間が4か月になったなら業務委託の報酬も当然に400万円になるのではないか」等といった紛争が生じ得るのでその予防のため,何が変わり何が変わらないかを覚書において明示することが望ましいこと(→第2弾§135)等が分かります。場面3でも,リサーチをすることで,PL法の欠陥概念には「指示・警告上の欠陥」もあり,説明をしっかりしていないとユーザーの誤使用により生じた事故についても企業が責任を負う可能性があることが分かります。 このように,常に具体的事案があり,それを踏まえた具体的問題意識の存在を前提として,その具体的事案に即して実施する調査である,ということが本書の取り扱うリーガルリサーチの特徴です。3 案件を進めない場合を含むが外国法は含まないこと ここで,リーガルリサーチには,目の前の具体的事案に即して「案件を進める」ためのものが多いことは事実です。上記2の場面1では,リサーチの先に,示談交渉のため自社が負担すべき適正な損害の範囲について主張をするという目的があります。また,場面2では,覚書を作成することでプロジェクト期間を延長するという目的があります。場面3も,リサーチを踏まえ,顧客との交渉を進めることとなるでしょう。 もっとも,案件の中には,例外的ではありますが,進めるべきではない案件があることも事実です。例えば,違法性が強い案件です。そこで,本書のリーガルリサーチは,結果的に案件が進むのか,進まないのかを問わず,このような弁護士業務や企業の法務部門における活動で生じるものを包含しています。そのため,本書のリーガルリサーチは,例外的な場合における,「案件を前に進めない」場合のリサーチをも含むことに留意して§1
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