5§2 根拠の重要性キーワード【リスク管理】【根拠】 例えば，場面1の交通事故の案件において，まずは合理的な内容で迅速に示談を成立させることが目標とされ，また，仮にそれが難しければ訴訟を通じて合理的解決を図ることが目標とされるでしょう。その場合の重要なリスクとしては，過小要求をするリスクと過大要求をするリスクがあるでしょう。すなわち，交渉段階で要求が過小であると，結局成立し得る示談はかなり依頼者に不利なものとなり「合理的な内容」とならないでしょう。逆に，過大な要求をすると，迅速な示談という観点からはマイナスであり，相手との信頼関係を構築できず，合理的な提案をしておけば迅速に示談できた案件が，訴訟をしなければ解決できないものになってしまうということもあります。だからこそ，そのようなリスクを把握した上で，適切にリスクを管理するため，どの程度の要求を行うべきかを検討する必要があります。 だからこそ，「いかに依頼者の利益を実現するか」という目的においては，リスク管理が重要です。その意味で，個人が依頼者であれば，「全社的」な複数部門間の調整という観点がないところに一定の相違はあるものの，「リスク管理」の観点の重要性は企業法務と共通するといえます。 だからこそ，本書においては，リスク管理のために必要な調査をいかにして行うかという観点からリーガルリサーチについて述べるところ，それは，法務パーソンの行う調査だけではなく，弁護士の行う調査一般にも適用される議論とご理解ください。 私は司法試験に合格しています。自分の頭で考えて回答を出したのに，上司や先輩からは「それではダメだ，リーガルリサーチをして根拠を付して回答をしなさい」と言われます。私は上司や先輩に信頼されていないのでしょうか。 実務では，担当者個人の私見ではなく，「根拠」が問われます。上司や先輩はあなたのことを信頼しているとは思いますが，そうであっても，なおリーガルリサーチをして根拠を探すことが必要なのです。解 説1 実務では根拠が問われること 実務では，担当者（弁護士やインハウスを含む法務パーソン）個人の考えに基§2
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